はじめての涙 プーケット 物乞い 死体博物館 犯罪専門誌 電脳市場 トゥクトゥク ソイカウボーイ 拳銃 | |||||||||
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- ソイカウボーイ - タイに行く旅行者の何%かは、風俗が目的だという者もいる。 日本人に有名なパッポンやタニヤへ行けば、嫌というほど日本語の看板を目にすることができる。 夜、食事がてら歓楽街を歩けば、すぐに夜の世界のきらびやかなお姉様に出会うことができる。 しかし何も知らずに適当なお店に入ってしまうと、ボッタクリだったりオカマだったりするのでコワイ。 タイに行き始めてまもなく、私はこの世界を少しだけ垣間見ることができた。 現地に住み着いている日本人の友人に連れられて、何度か怪しい店に行ってみたのだが、中でも強烈だったのは、スクンヴィット通りから少し入ったところにあるソイ・カウボーイだった。 一般的にゴーゴーバーといわれるお店では、BGMが大音量で流れるフロアの中、大きなカウンターの上で女性が下着姿などで踊っている。 客はそれを見ながらお酒やコーラを飲み、気に入った女性がいたら指名をし、後は…。 長くなる前に本題だ。 そのソイ・カウボーイの中にある店によく通っている。という友人に連れられて行った店は、このゴーゴーバーの部類だった。 その店も外観は古かったが、何よりも怖かったのは入り口だった。 小汚いドアは開放されていて、上からはボロボロになった色付きのビニールのすだれがかかっており、中の様子はほとんど見えない。 まるで遊園地のおばけ屋敷だ。 「この怪しさが、いいでしょう?」と友人は言った。 中に入るなり、すぐに厚化粧のキレイな女性が親しげに近寄ってきて、友人と話しをしだした。 そして指定された席に座り、飲み物を注文したのだが、ふと気になったことがあった。 大音量のBGMはかかっているのだが、一人も女性が踊っていない。 客もまばらだし、空いているせいなのか…? 雑談をしながらビールを飲んでいると、店の奥からだらだらと3人の女性が出てきた。 やる気なさそうに踊りはじめたので、私は興味本意でここに来てしまったことに申し訳なさを感じた。 彼女たちも生活のため仕方なくこの世界に入ったのだろうし、大金をはたく客でなければ割りが合わないだろう。 すみません、お姉さま方…ん?オネエさま? と思っていたのだが暗闇の中、ライトに照らし出された彼女たちの顔をよ〜く見ると明らかにオネエさまというには悲しすぎる、オバサマ達であった。 特殊メイクもここまでくると、神業のようだ。 「おぉ〜!これぞアジアの妖術。」 私が動揺しているのを察知した友人が言った。 「すごいだろう〜。いつもなんだよ。」 聞けば、これが目的でこの店にくる常連客が多いのだという。 「なんか気取ってないところがいいんだ。田舎に帰ってきたようで。」 と、さらりと言う友人に、私は頷くしかすべが無かった。 タイはふところが大きい。母なる川メナムチャオプラヤーのように雄大で寛大だ。 お母さま。すべてに感謝します。 ビニールのすだれをくぐって現世に戻ったとき、私は心から思った。 シャバの空気はうまい… |
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