はじめての涙 プーケット 物乞い 死体博物館 犯罪専門誌 電脳市場 トゥクトゥク ソイカウボーイ 拳銃 | |||||||||
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- 拳銃 - タイに行きはじめると、あらためて外から日本を眺めることができる。 普段いくら愚痴をこぼしていても、日本ほど治安の良い平和な国家は無いのではないか。 バンコクから北北西に20kmのところにあるノンタブリーへ行ったときのことだった。 建築中の友人の店へ行ったその日の夜、宴会を催すことになった。 当初、そのタイ人夫婦の他に兄弟や知人を入れて6人ほどいたのだが、宴会先のバーのオーナーも友人だということで一緒に加わり、計7人で飲んでいた。 酒もほどよく回ってきた頃、見知らぬ顔のタイ人が2・3人、増えていた。 誰かの友人らしい。 タイ人は大勢でつるむのが好きなのだろう。 友達の友達ならもう友達、横社会の細くて広い絆で繋がっているのだ。 その中に一人、ひょうきんに笑っているがしかし、イカツイ顔つきの大柄なタイ人がいた。 聞けば彼の職業は警察官だという。 仕事が終わって飲みに来たら仲間がいたので参加した、ということだった。 日本人がいることが珍しいのか、やたらにいろいろと尋ねてきた。 日本から持ってきたワサビを渡し、魚につけて食べてみろと勧めてみた。 普段、あんな辛いタイ料理を平然と食べているクセに、「チョ−カラ〜イ!」と顔を歪めて笑わせてくれた。 宴もたけなわになると、各々がロレックスやら金のネックレスやらを持ち出して、自慢大会になってきた。 タイ人には見栄張りが多く、やたらと自慢話しをする者が多い。 突然、チョボヒゲのタイ人が言ってきた。 「拳銃、見たいか?」 おいおい、物騒な… 答えに戸惑っていると、そのチョボヒゲのタイ人が警察官だというタイ人に合図をした。 そいつは照れくさそうに笑いながら服の内側から拳銃を取り出し、 「日本じゃ見たこと無いだろう。重いから持ってみな…。」そう言ってこちらに渡そうとする。 周りのタイ人に「危ないよ〜。」と言われ止めるのかと思いきや、薬きょうを取り出し、 「これならいいだろう。」とこちらに渡してきたのだった。 ここだけ見ると、何だかマフィア映画のワンシーン、いやパロディのようだ… 「お前らは、そんなものまで自慢したいのかよ!?」 と突っ込みたい心境だったが、ぐっとこらえて私は言い放った。 「拳銃はアメリカで撃ったことあるんです。でも、せっかくだからありがたく頂戴します。」 そしてカバンに入れるフリをすると、みんな笑ってくれた。 いや、笑い事ではない。ジョークを言っている場合じゃないのだ。 タイでは一般市民でも、所持証明書の手続きを取れば比較的簡単に銃を手にすることができるという。 彼の場合は警察官だから持っていたのだが、酒の席で見せびらかすなど持ってのほかだ。 もし彼が酔っ払って、勘定を払わずに帰っていこうとしても、誰も異議申立て出来ないではないか。 いや、そんな事を言いたいわけじゃないのだが、もっと取り締まってくれタイ政府よ… そう思いながら、私はトイレに向かった。 見上げると月の美しい夜だった。 |
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